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ななかいのじゅうにん
七階の住人
宮本 百合子
「文芸春秋」1926(大正15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,128 字 · 15 页
それに、食堂掛の老嬢の好意か、客卓子は、いつも定って部屋の一番入口近い端にあった。幾十という、すばしこい、笑いたい盛の若い娘の視線が蜘蛛の網のように一点に注がれる。いやでも、伏目がちにしゃちこばり、聖餐にでもあずかるように坐っている若者を見ずにはいられない。さし向いで、これも、言葉尠く、背中へ神経を吸いとられている女の方にとっても、楽しい食事とは云い難いに違いない。雀斑(そばかす)のある、本当に拵えたての棕櫚箒のような頭をした若者が、ひどく自分自身をもてあまし、重大な問題でも審議するように物を云っているのが、伸子には少し気の毒に思えた。
伸子は、豊子と食堂を出た。彼女達は、昇降機の前で立ち止った。
「――どうせすぐまた降りなけりゃあならないから、もう下へ行っていたいわ」
「それでもいいわね」
七時四十分から、下の客間で集りがあることになっていたのだ。
集りは三十分ほどで済んだ。あけ放した観音開きの扉から、浮かない顔付の娘達がぞろぞろ出て来る。先へ出た伸子は、豊子を待った。豊子は、今年卒業する学生の一人と話しながら来た。
「さようなら、じゃあまた明日。大丈夫ですよあのテストは、相手によって難しいんですもの」