轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ななかいのじゅうにん

七階の住人

宮本 百合子

「文芸春秋」1926(大正15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,128 字 · 15 页

青空文庫

「――あの方々にはね、人生なんぞちっとも分ってはいないんですよ。寄宿舎から、学校、学校から寄宿舎、ね。活きた規則書というばかり!」

伸子は、襟(カラー)をつけ終った服に着かえ、鏡台の前で一寸工合をなおした。ミセス・コムプスンの掃除もすんだ。彼女は伸子の後に来た。

「貴女にはよくこちらの着物がお似合いですよ、それにいいものをお持ちだから」

「そうかしら――。どうも有難う。これですっかり埃がなくなったわ」

伸子は、机の上の本など動した。ミセス・コムプスンは、直ぐ出てゆかず、寝台被のずれをなおしている。――彼女が入って来た時、伸子は珍しく会ったのだから、少し心づけをやろうと思った。けれども、話しているうちに心持がこじれた。ミセス・コムプスンが、うまく同情させたと思うようでは厭だ。この次やろう。早く出て行ってくれればよいと、机や鏡台のところをぶらついたのだ。

ミセス・コムプスンは去り難そうにしていたが、やがて、

「―― Well ……」

と呟きながら、やっこらと水桶を持って敷居を跨ぎかけた。窓の方を向いたまま、伸子は思わず破顔した。いかにも、心づけなんぞは諦めた。