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さんにんきょうだい
三人兄弟
菊池 寛
「赤い鳥」赤い鳥社、1919(大正8)年4月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,630 字 · 22 页
「私に離れぬようにせよ。」と言いながら、大木の森の中の細い道を歩いて行くのです。と、二、三丁も来た頃です、急に今までの森がなくなったかと思うと、池に添うて広い平地があって、その平地の真中に、それはそれは立派な御殿がありました。二郎次には生れて初めて見るほどの美しい大きな御殿でありました。先に立ってゆく武士は、
「さあ、お前も遠慮なく這入るがよい。」と言いながら、その御殿の中へつかつか這入って行きました。
玄関から幾間も幾間も通ったと思う頃、一つの大広間に来ました。その大広間は、銀の皿に、灯が幾十となく輝いて、昼のように明るうございました。
見ると、その広間の中には、どれもこれも強そうな男が三十人ばかりお酒宴をしていました。そして一番高い所に、身の丈が六尺もある位な大男が、胡座をかいて坐っておりました。それはそれは強そうな、獅子でも虎でも一掴みにしそうな男でした。
二郎次を連れて来た武士は、その大男の前へ二郎次を連れて行って、
「この若者が奉公をしたいと申しますから、引き連れてまいりました。」と申しますと、その大男は、
「よしよし。」と破鐘のような声を出して肯きました。