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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
あのロケットが送ってよこすテレビジョンが、いま操縦室の映写幕にうつっているから、見にこない」
「えっ、もう見えていますか。行きますとも」
カコ技師について操縦室へはいっていくと、そこには本艇の主だった人々がみんな集っていた。そして副操縦席のうしろの椅子に腰をおろして計器番の上にはりだした映写幕にうつるテレビジョンを見ながら、意見を交換していた。
映写幕の上には、大きな丸い環が、いくつもうつってそれがゆるやかに下から上へ動いていく。
「いま見えているのは知っているね。月の表面にある噴火口といわれるものさ」
「ああ、本で見たことがあります」
正吉はカコ技師にもたれながら答えた。噴火口のまわりの壁は、ずいぶん高くそびえている。そして右側に、黒々とした影をひいている。
「映写幕の左上の隅のところにあるのがアポロニウスという噴火口だ。その下の方――つまり北のことだが、危難の海という名のついた海のあとさ。ほら、だんだん大きな噴火口が下の方からあらわれてくる……」
大きな噴火口があらわれては、消える。
画面が急にかわった。映写幕の右の方に月の面が大きく弧線をえがいてうつった。