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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

こわい」

正吉はふんがいして、両手をキンちゃんの胴中へまわして、ぎゅうとしめつけた。

「あいたたたた」

キンちゃんは、大げさに顔をしかめて、悲鳴をあげた。

「わる口をいうと、おみやげを持ってかえってやらないよ」

「えッ、お土産。ああ、そうか。坊や、いい子だからお土産うんと持って来てくんなよ。ウサギの子でもいいし、ウサギがついた餅でもいいからね」

月の中にウサギが住んでいると思っている、キンちゃんだった。

装甲車の戸があいた。マルモ隊長とカンノ博士のあとについて正吉は外に出た。

はじめて月の表面に足をおろして歩くのであった。変な気持だった。身体がいやにかるく、今にもふわッと浮きあがりそうであった。そうでもあろう。ここでは重力が、地球の場合の六分の一なのだ。物の重さが六分の一に減ったように感じるのだ。

徒歩の一行は十名ぐらいだった。

そのあとへ六台の装甲車がついてくる。あと三台は、さっきのところに待っている。その中に正吉の乗っていた一号車もあった。

一行は、山のすそを左の方へぐるっとまわっていった。よく見ると、道がついていた。かたい岩がけずられて、道跡になっている。