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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

その上に黒ずんだ三センチほどの厚さでたまっている。

もちろん草も生えていなければ、虫が鳴いているわけでもない。自分の足音さえ聞えないのだ。

ぐるっと山のふもとをまわりこむと、目の前に洞門があらわれた。

「ああ、あんなものがある」

正吉はびっくりした。洞門の中から、がんじょうな鉄の扉も見える。月の世界にそんな建造物があろうとは思わなかった。

そばへ近づくと、ますますおどろきは大きくなった。鉄の扉には、日本文字が、うす彫りで並んでいた。「新につぽん探検隊月世界倉庫第九号」

こんなところに、探検隊の倉庫があったのか。いったい中には、何がはいっているのであろうか。

「おや、これはおかしいぞ。門の扉がこわれている。どうしたんだろう」

カンノ博士の声が、電波にのって、正吉の受話器にもひびいた。なるほど、扉の下が大きくひんまげられて、犬くぐりよりもやや大きい三角形の穴があいている。一同はそばへ走りよったが、またつづいてカンノ博士の声。

「おや扉の中に、白骨死体がある。誰だろう。こんなところで死んでいる人間は……」

消えうせた燃料

なぞの人骨はそのままにしておいて、急ぐ方の仕事にとりかかった。