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あるくこと
三好十郎の仕事 第三巻
三好 十郎
三好十郎『三好十郎の仕事 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:歩くこと、鈴が通る、破れわらじ、廃墟(一幕)、猿の図、その人を知らず、冒した者、抵抗のよりどころ、アメリカ人に問う、「廃墟」について、「その人を知らず」について、日記より、「冒した者」について。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,472 字 · 667 页
須永 ……(これも耳をすましていた後)きれいだな。
モモ ……(フルートを吹く。例のメロディだけを、静かに尾を引いて三度ばかり吹きすます)
須永 ……(その間に、ズボンのポケットから、ハンカチにくるんだ小さいビンを出し、一息にクッと飲み、ビンを塔の外に捨てる。それが月光にチカッと光って消える。……そのまま、手すりに立ってフルートを聞いている。メロディの切れ目の所で、静かな声で)あい子、そんなに急がないで。待ってくれ。……(月の方を向いてスッと身体が傾いたかと思うと、足が手すりを離れ、あまり重さの無い棒が落ちて行くように横になったままスーッと下へ落ちて行き、今度は、いつまでたっても音はしない)
モモ ……(しばらく吹きつづけてから、フッと吹きやんで)え、なあに? (須永が居なくなった事に気づかぬ。返事を待つ気も別に無く、軽い明るい声が須永に話しかける)ほらね、お月さんが胸んとこまで来たでしょう? グングン昇る。須永さん、そっちい向いてごらんなさいよ。ね! お月さんは冷たい、もう死んでると言うけど、でも、お月さんの光が、おちちの下のへんまで来ると、なんだか、あたし、くすぐったくなるのよ。