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さんねんめ

三年目

山本 周五郎

「雄弁」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,214 字 · 22 页

青空文庫

したとき、一本気から手厳しくたしなめたことがある。

――いいわ。

そのときお米は泣きながら云った。

――友さんに嫌われたらおしまいよ、あたしもう駄目な女になってやるわ。

「あのときあたし、本当に廓へでも身を売っちまおうかと思ったのよ、……ませていたのね、あのときあたしは十六だった、友さんが十八ね、……二つ違いは縁が無いっていうけれど、本当だったわ」

「あれから間もなく引越したようだったが、ここにはいつ頃から来ていたんだ」

「この家へ来たのはつい先月よ、ずいぶん苦労をしたわ、おとっさんもおっかさんも死んだし、今では寒烏の一羽っきりで気楽だけれど、その代りなんの張合いもありゃしない、この頃は昔のことばかり考えているのよ。……あら、しゃべっていてすっかりお酌を忘れた、ごめんなさい」

「そいつはもう空だぜ」

「おや本当、こんなのってあるかしら」

お米は笑いながら立って行ったが、戻って来るといきなり、

「自分の話で夢中だったけど、友さん」

と大きな眼をして云った、「……あなたのほうはいったいどうしたの、あたしは友さんがお菊さんと夫婦になって、広田屋さんの跡を取るんだって聞いていたのに、あれは噂だけだったのかえ」