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さんねんめ
三年目
山本 周五郎
「雄弁」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,214 字 · 22 页
友吉は舌打ちをしながら呟いた。
張詰めてきた気持が一時に崩れて、けじめのつかない、がっかりした頭の芯に、……ふとお菊の美しい眸が大きく描き出された。
「よう、友さんじゃあねえか」
「……え!」
「やっぱりおめえか、どうしたい」
風呂帰りであろう、浴衣に平絎帯で手拭を持った三十七八の男が、傘を傾けながらやって来る。……友吉にとっては親方筋に当る大工の棟梁の息子で、仁太郎という道楽者だった。
「ああこれは、堀の若棟梁でございましたか」
「ずいぶん久しぶりの対面じゃねえか、なんだか上方へ行っていたってえが、いま帰って来たのかい」
「へえ、まだこんな恰好なんで」
「そうかい、それでおめえ……これから角のところへ行くつもりなんだろうが、角はいねえぜ」
「若棟梁はご存じですか」
「角はおめえお菊さんと夫婦になって、二年めえに旧のところは引越しちまった、なんでも今は深川辺にいるってえこったぜ」
「角が……お菊さんと……」
友吉は足が震えるのを感じた。……仁太郎はふと往来なかだということに気付いたようすで、「どうだ友さん、久しぶりで会ったんだ、どこかで浴衣にでも着替えてひと口付合わねえか、……どっちにしてもその恰好じゃしようがあるめえ、いい家があるぜ」