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よのなかへでるこどもたち
世の中へ出る子供たち
小川 未明
「婦人朝日」1939(昭和14)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,905 字 · 8 页
」と、ある日、高橋は、正吉に向かって、いいました。
「しかし、お母さんは、お達者なのだろう。」
「ああ、病気ってしたことがないよ。それも、二人の子供を自分の手で養育しなければならぬので、気が張っているんだね。」
高橋は、そう答えました。正吉は、お母さんのことを考えると、すぐ、涙が目にあふれてくるのです。
「僕も、一度お母さんを、湯治にやってあげたいと、思っているうちになくなられて、もう永久に機会がなくなってしまった。」と、正吉は、歎息をもらしました。
「しかし、君には、まだ、お父さんがあるからいい。せいぜい孝行をしてあげたまえ。」
なくなった母親を思い出している、さびしそうなお友だちの顔を見ると、高橋は、こういってなぐさめたのです。
もう、季節は、秋の末でありました。正吉は、高橋を見送るため、門から出ました。短い日ざしは、色づいた木立や、屋根の上に、黄色く照り映えていました。
「高橋くんも、こちらに勤め口があるといいんだがな。」
正吉は、ただ、近く別れるのが悲しかったのでした。こちらに、思わしい就職口がないので、高橋が、地方へいくのを知っているからです。
「雪は、深く降らないけれど、僕のいくところは、冬の寒い田舎なんだよ。