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よのなかへでるこどもたち
世の中へ出る子供たち
小川 未明
「婦人朝日」1939(昭和14)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,905 字 · 8 页
二
「みんなは、世間に名を知られるような、えらい人になれなくともいいから、正しい人間となって、どうか幸福に暮らしてもらいたい。」といって、うつむかれたが、そのとき、目の中に涙が光ったのです。先生のお言葉は、胸にしみて、思わず知らず、三人は、いっしょに頭を下げました。
二
それは、つい、昨日のことのようなのが、もう四、五年もたちます。小学校を出てから、三人の身の上にも、変化がありました。中でも気の毒なのは、小原で、体が弱くて、中学校を退きました。正吉も、また最近母を失って、年をとった父親だけとなりましたが、工手学校を出ると、すぐ勤めています。高橋は、このほどようやく工芸学校を卒業して、田舎へいくことになったのです。
正吉と高橋は、同じ種類の学校でありましたので、平常も往来をして、自分たちの希望を物語ったり、身のまわりにあったことなどを打ち解けて、話し合ったのでした。
「僕のお母さんはね、昔の芝居が好きなんだよ。だけど歌舞伎座なんて、高いだろう。それに、いく暇もないのさ。僕と妹のために、盛り場さえめったに出られなかったのだものね。僕は、お母さんが達者なうちに、すこしは楽をさしてあげたいと思うのだけれど、おぼつかないものだな。