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せそう

世相

織田 作之助

「人間」1946(昭和21)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,089 字 · 64 页

青空文庫

を追出されてしまった。「部屋」というのは散髪の職人の組合のようなもので、口入れも兼ね、どこの店で働くにしてもそれぞれの「部屋」の紹介状がなければ雇ってくれない、だから「部屋」を追いだされた自分はごらんの通りのルンペンになっているが、今度新しく別の「部屋」に入れて貰うことになったので非常に喜んでいる、ところが「部屋」にはいるには二百円の保証金がいる、働いて返すから一時立て替えて貰えないだろうかと言う。横堀は丈は五尺そこそこの小男で、右の眼尻の下った顔はもう二十九だというのに、二十前後のように見える。いつまでも一本立ち出来ず、孤独な境遇のまま浮草のようにあちこちの理髪店を流れ歩いて来た哀れなみじめさが、ふと幼友達の身辺に漂うているのを見ると、私はその無心を断り切れなかった。散髪の職人だというのに不精髭がぼうぼうと生え、そこだけが大人であった。商売道具の剃刀も売ってしまったのかと、金を渡すと、ニコニコして帰って行ったが、それから十日たったある夜更け、しょんぼりやって来た姿見ると、前よりもなお汚くなっていた。どうしたんだと訊くと、いや喜んで貰いたい、自分のような男にも女房になってやるという女が出来た、自分は少々歪んでても、曲っててもいい、女房になってくれる女があれば、その女のために一所懸命やろうと思っていたが、