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せそう
世相
織田 作之助
「人間」1946(昭和21)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,089 字 · 64 页
があるのだった。
その四五日前、私は「ダイス」のマダムから四ツ橋の天文館のプラネタリュウム見物を誘われた。彼女は私より二つ下の二十七歳、路地長屋の爪楊枝の職人の二階を借りた六畳一間ぐらしの貧乏な育ち方をして来たが、十三の歳母親が死んだ晩、通夜にやって来た親戚の者や階下の爪楊枝の職人や長屋の男たちが、その六畳の部屋に集って、嬉しい時も悲しい時もこれだすわと言いながら酔い痴れているのを、階段の登り口に寝かした母親の屍体の枕元から、しょんぼり眺めていた時、つくづく酒を飲む人間がいやらしく思った筈だのに、やがて父親の後妻にはいって来た継母との折れ合いが悪くて、自分から飛び出して芸者になると、一年たたぬ内に大酒飲みとなってしまったという。引かされて清水町で「ダイス」の店をひらいたのは二十五の歳だったが、旦那が半年で死んでしまうと、酒のあとで必ず男のほしくなる体を浮気の機会あるたびに濡らしはじめ、淫蕩的な女となった。何を思ったのか私を掴えても「わては大抵の職業の男と関係はあったが文士だけは知らん」と、意味ありげに言うかと思うと、「あんたはわてを水揚げした旦那に似ている」