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アラスカのひょうが

中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河』。同一底本的分册已合并为一书。收入:アラスカの氷河、永久凍土地帯、黒い月の世界、白い月の世界、満洲通信、アメリカの旅、アラスカ通信、ウィネッカの秋、ウィネッカの冬、ツンドラへの旅、ネバダ通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 122,039 字 · 248 页

青空文庫

無人の世界というよりも、これはまったく生命のない世界といったほうがよい。グリーンランドの地図を見ると、海岸に沿ったごく狭い地域だけに色が塗ってあって、内部は真白になっている。この白く残されたところが氷冠であって、少なくも日本領土の六倍はある。そしてそこにあるものは、雪と氷だけであって、木もなければ、岩も見られない。要するに黒いものは、何ひとつない世界である。

さらに驚くべきことは、この氷冠の氷の厚さである。氷冠の標高は、大略ながらほとんど全土にわたって測られているが、いちばん高いところは、一万一千フィートを越え、平均して、約七千フィートである。ところで氷冠の厚さを、地下探鉱によく用いられる人工地震波で測ってみると、厚さは大体標高に近いか、あるいはそれよりも少し大きい値に出る。氷の底は、海面に近いか、あるいは海面下である。それでグリーンランドの氷冠は、ひと口にいえば、だいたい日本アルプスくらいの厚さで、日本全土の約六倍の大きさの氷の鏡餅と思ってよい。要するにとほうもないものである。

氷冠の上には生命がないといったが、それも当然である。草や木が生えようと思ったら、氷の中に長さ七千フィートの根をおろさねば下の土にはとどかない。