轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まるのうち
丸の内
高浜 虚子
「東京日日新聞」1927(昭和2)年3月15日~31日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,875 字 · 46 页
まだ誰も客のいないテーブルの一つに陣取る。
ここの壁や柱には万葉の歌が沢山に書いてある。見るともなしにそれを見る。
誰か園の梅の花ぞも久方の清き月夜にこゝだ散り来る
ほとゝぎす来啼きどよもす橘の花散る庭を見む人や誰
天の川霧たちわたり彦星のかぢの音聞ゆ夜の更け行けば
今朝啼きて行きし雁金寒みかもこの野のあさぢ色づきにける
あが宿の秋萩のへに置く露のいちじろしくもあれこひめやも
率直なる感情を高朗なる調子でうたう万葉の詩人をなつかしく思う。柱の下の瓶には薄紅梅が生けてある。その薄紅梅の花を見ると平安朝の大宮人を連想する。
海上ビルデングの建物が行幸道路を隔ててそびえている。すぐ近くには郵船ビルデングの大きな建物がのぞいている。
先刻見た古い地図の事が思い出される。それは寛永、元禄、天保、文化、嘉永等数枚の丸の内の地図であった。
その地図を見ると、古くからこの丸の内は大名屋敷がかず多く並んでいたものと見える。その屋敷も時代時代によって人が変っておるが、ただ変らぬのは鍛冶橋内、即ち今の東京市庁のあるあたりが土佐と阿波の藩邸であったことと今の鉄道省の敷地のあたりが細川越中守の邸であったことである。