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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

そして。

無礼! 狼藉! この源六郎に不浄の縄をかけるとは何ごと……などとわめきたてるのも構わず奉行所へ引ったてて、左右に大篝火、正面に忠右衛門が控えて夜の白洲をひらいた。

「これ! 不届至極! そのほうは何者か、乱心いたしたな?」

と、上段の忠右衛門がはったとにらむと、

「乱心? 馬鹿を申せ。われは松平源六郎である。縄をとけッ」

「だまれ」忠右衛門も声をはげまして「松平源六郎とは恐れ多いことを申すやつじゃ。なるほど紀州第六の若様は源六郎殿とおおせられるが、いまだ御幼年ながら聡明叡智のお方で、殺生禁断の場所へ網をおろすような不埓はなさらんぞ。そのほうまさしく乱心いたしおるとみえる、狂人であろう汝は」

「狂人とは何事! 余はまったく紀州の源六郎に相違ない」

「またしても申す。これ、狂人、二度とさような言をはくにおいてはその分にさしおかんぞ。汝がすみやかに白状せん以上、待て! いま見せてやるものがある」

こう言って忠右衛門が呼びこませたのが、小俣村の百姓源兵衛という男、名主そのほか差添えがついている。

「源兵衛、面をあげい。とくと見て返答いたせ。これに控えおるはそのほうの伜源蔵と申す者に相違なかろう? どうじゃ」