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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

千住竹の塚。

ほがらかな秋晴れの朝である。

軒の端の栗の梢に、高いあおぞらがのぞいて、キキと鳴く小鳥の影が陽にすべる。

「百舌だな……」

栄三郎はこういって膳に向かった。そして、

「いかにも田舎だ。閑静でいい。こういうところにいると人間は長生きをする」

と、改めてめずらしそうにまえの広場に大根を並べ乾してそれにぼんやりと、うすら寒い初冬の陽がさしているのを眺めていた。

孫七は黙って飯をほおばっていた。

鶏が一羽おっかなびっくりで土間へはいろうとして、片脚あげて思案している。

「七五三は人が出ましたろう。神田明神なぞ――」

お兼婆さんが給仕盆を差しだしながら、穂をつぐように話しかけると、

「お兼もいっしょに食べたらどうだ? そう客あつかいをされては厄介者の私がたまらぬ」

と栄三郎はすすめてみたが、お兼も箸をとろうともしなければ、息子の孫七も口を添えないので、三人はそれきり言葉がとぎれて、黒光りのする百姓家のなかに貧しい朝餉の音が森閑と流れた。

心づくしとはわかっていても、悩みをもつ栄三郎には咽喉へ通らない食事であった。

やがて無口の孫七は、むっつりして粗朶を刈りに立つ。