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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

まるで宿場女郎をぬいてきて嬶ア大明神にすえたよう――。

そればかりではない。態度口振りからいうことまで、ガラリと自堕落にかわったお艶であった。

こうではなかった。すこし以前までこうではなかった。と考えるにつけ、栄三郎は、何がかくまでお艶を変えたのか? その理由と動機を思い惑うよりも、もうかれは、日常の瑣事に何かと気に入らないことのみ多く、つい眼に角をたててしまうのだった。

そのために、いまも昔も変りのない、犬も食わない夫婦喧嘩に花が咲いて、今日もきょうとて……。

先刻、塗りのはげたお膳を中に、ふたりが朝飯にかかった時だった。

なんぼなんでも、他にしようもあろうに、はぶけるだけ手をはぶいた、名ばかりの味噌汁と沢庵のしっぽのお菜を栄三郎が、あんまりうまそうに口へ運ばなかったからと言って、例によって、お艶がまず、待っていたように火ぶたを切ったのだ。

「まあ! まずいッたらしいお顔! なんでそんなお顔をなさるの?」

「…………」

「あたしのこしらえた物が、そんなに汚いんですかッ!」

「ま、お前、何もそう――」

「いいえ! こう申しちゃなんですが、そりゃあお金さえあればねえ、あたしだってもうすこしなんとかできますけれど……フン! だ」