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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

間髪! の隙を狙ってはいりこんで来たお藤、坤竜に手がかかるが早いか、サッと袂に抱きしめてもとの裏口へ!

しんにとっさの出来事。

ズウッ! と台所の戸がしまって、あとはトットと雪を踏むお藤の跫音がかすかにうらにひびいた。栄三郎はさよを招じあげながら、何事も気づかずに大声に話していた。

「いや。この大雪のなかを思いきってお出かけになりましたな。何かよほどの急用でも……」

「ほんとにひどい雪ですねえ。わたしゃ本所からここまで来るあいだに三度ころびましたよ、栄三郎さん」

「はっは、それはどうも――が、べつにお怪我もなく……して、さっそくながら御用向きは?」

「降りますねえ。いえ、この御土産から……」

おさよ婆さん、はッと呼吸をはずませて乾雲丸の包みをといている。

「全く、よく降ります。明日はかなり積もりましょう」

栄三郎はこうしんみり言って、戸外の雪を聴くように静かに耳をすましながら、おさよの手もとに見入った。

ぱらり! ぱらり! とほそ長い包装がほどけてゆく音――。

ぱらり、 ぱらり! とおさよの手で幾重にも包んだ油紙とぼろ片がとけてゆくうちに、いつしか堅く唾をのみながら、じっとおさよの手もとをみつめていた栄三郎の眼に、一閃チラリと映ったのは!