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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

向うから雪風に追われて、小走りに来る一つの影があった。

乾雲坤竜ふたたび糸を引いてか、乾を帯した栄三郎と、坤を持した丹下左膳、それは再び奇しき出会いであったと言わなければならぬ。

雪に埋もれる法恩寺橋の橋上、ぱったりぶつかりそうになった雲竜の両士、

「やッ! 諏訪……栄三郎ではないかッ」

と、剣妖左膳、雪をすかして栄三郎を望めば、その声に覚えがあるか栄三郎、ピタリと歩をとめて近づく左膳を待ちながら、

「オオ! そういう貴様は丹下左膳だなッ!」

向き合った左膳の独眼、みるみる思いがけない喜びにきらめいて頬の刀痕を雪片が打っては消える。

「ウム! 文句は言わせねえ。すまねえがこの坤竜をまきあげたからにゃ、てめえごとき青侍に要はねえのだ。ざまあ見やがれ」

と、それでも早くも刀の柄に手がかかるのを、栄三郎はしずかに押しとどめて、

「待たれい、丹下! なるほど坤竜丸を何者かに盗み去られしは拙者の不覚。なれど、そういう貴公もあまり有頂天にはなれぬぞ。さ、この大刀におぼえがあるかどうだッ?」

言いもおわらず突き出した栄三郎の手に、思いがけなくも乾雲丸が握られてあるのを見ると、左膳の長身、タッタッと二あし三足、よろけざま橋の欄干に手をつかえて、