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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
「ナニ! 助勢を? 誰がどこへ……?」と思わず泰軒、碁をそっちのけに乗りだすと、忠相は手の石で盤をパチパチたたきながら、
「泰軒! 碁だ、碁だ――が、サア、まず求援の使いの向かう方角は……」
「うむ。その方角は……」
「さればさ――さしずめ、北のかたかな」
こう言い放っておいて、忠相はジロリと泰軒を見やった。
一石駆けぬけて援軍を求めに走りつつある――しかも、その方角が北のかた!
という忠相の言葉に、蒲生泰軒はキッとなって盤をにらんだ。
いかさま、ひとつの黒い石が、忠相の手によって黒団を離れ、碁盤の隅に孤独の旅をいそぎつつあるように見える。
これこそ、奥州中村相馬藩の城下へ、左膳のために剣客のむれを呼びに草まくらの数を重ねつつあるつづみの与吉のすがたではなかろうか。
「サ! どうする? どうする気じゃ?」
忠相はこううながすように言って泰軒を見た。
じっと石の配置に眼をすえたまま、泰軒は動かない。そのかげに身をすくませているお艶も、いつしかこの碁戦の底にひそむ真剣なかけひきに釣りこまれて、われを忘れて、横のほうからのぞきながら、見入り聞き入りしているのだった。