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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

猛犬に踵をかがれながらさびしい道をあるいていく時の気もち……ちょうどあれだった。背骨がしいんとして、腰の蝶番が今にもはずれそうに思われる。駈け出すわけにはいかず、そうかといって振り返ることもできずに、与吉は半ば死んだ気でフラフラと往還のみちびくがままにたどってゆく。

すぐあとから泰軒先生が、一升徳利を片手にぶらさげ、鬚の中から生えたような顔に微笑を浮かべて悠々閑々とついて来るのだった。

珍妙奇天烈な二人行列。

それが、陽うららかな宇都宮街道を、先が急げば後もいそぎ、緩急停発ともに不即不離のまま、どこまでもどこまでもと練っていくところ、人が見たらずいぶんおもしろい図かも知れないが、当の与吉の身になると文字どおり汗だくの有様で、兄哥すっかり逆上ってしまっている。

どうも薄気味の悪いことこのうえない。

もうすこし離れてつけてくるのなら、こっちも駒形の与の公、なんとかして撒く才覚も生まれようというものだが、こうピッタリかかとを踏まんばかりにくっついていられては、どうにもこうにも考えることさえできないのだ。

それも。

おい! とか、コラ! とか声でもかけてくれるならまだいい。