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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

その時、小熊は兎角のために橋の欄干へ押しつけられ、すでに危うく見えたのだったが、すもう巧者の小熊いかがしけん。兎角の片足を取って橋の下へ投げおとし、同時に脇差を抜いて、八幡これ見よと高声に呼ばわりながら欄干を切った……この太刀跡、かの明暦三年丁酉正月の大火に両国橋が焼けおちるまで、たしかに残っていたそうである。

さて。

兎角、悪いやつは滅びる――などと洒落てみたところで、そんなら、この根岸兎角の微塵流剣法、これで見事に、それこそ微塵となって大川に流れ果てたかというにそうではない。

撃剣叢談巻の二、微塵流のくだりに。

武芸小伝に微塵流往々存するよし見えたれば、兎角が末流近世までも行なわれしがごとし。いまも、辺鄙にはなお残れるにや、江戸にはこの流名きこゆることなし……とあるとおりに、月輪軍之助の祖月輪将監は、根岸兎角ひらくところの微塵流から出てのちに、北陬にうつり住んで別に自流を創し、一気殺到をもって月輪一刀流と誇号したのだった。

当代の道場主軍之助は、以前から丹下左膳と並称された月輪門下の竜虎。

左膳に破流別動の兆あるに反し、軍之助は一刀流正派のながれを守るものとして先師の鑑識にかない入婿して月輪を名乗っているのだが、剛柔兼備、よく微塵流の長を伝えて、年配とともに磐石のごとくいま北国を圧する一大剣士であっ