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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
もらおう。それまではこの田舎者の道あんない。まあ、何も話の種だ」
とあきらめて、一同とともに打ちつれだって出て来たのだが、性来粋がっている江戸ッ子の与の公、仮装行列のお供先を承っているようで、日光のかくかくたる街道すじを練ってゆくとなんとも気のひけることおびただしい。
いまでさえこうだから、江戸に近づくにつれてその気恥ずかしさは思いやられる。どっちへ転んでも情けねえ役目をおおせつかったものだ! と、つづみの与吉、口のなかで不平たらたら……大きな肩に挟まれて木戸の宿場の登りぐち、虫の知らせか、進まぬ足を踏みしめて一歩一歩と――。
かえりは、道をかえて水戸街道。
常陸の水戸から府中土浦を経て江戸は新宿へ出ようというのだ。
奥州本街道とはすっかり方角が違うから、二本松に残して来た蒲生泰軒に出会する心配はまずあるまい。また仮りに行き会ったところで、こんどはこっちのもの、与吉はすこしも驚かない。
富岡より木戸。
この間、二里の小石坂。
いい眺望である。
山に沿ってうねりくねってゆく往還、片側は苗木を植えた陽だまりの丘で、かた方は切りそいだように断崖絶壁。
まっ黒な峡にそそり立つ杉の大木のてっぺんが、ちょうど脚下にとどいている。