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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

奪ったのは当然、弥生はあやうく男装を忘れ、驚異の声を放ち眼をおおおうとしたくらいだった。

まれに見る怪物!

おびえた子供が、片すみで! ワッと火のつくように泣き出すと、劉はそっちを見てニコニコしている。

割りに気はいいらしいので、皆もいささか安心して、すこし浮き足だったのが、またソロソロ舞台のほうへつめかけ出すと、

「唐のお女中の悪血が凝って、月たらずで生まれましたのがこの太夫、御覧のとおりのお化けながら、当年とって三十と九歳! 劉さん!……あいヨウ――」

香具師がそばから披露をするのはいいが、自分で呼んでじぶんでこたえるのだから世話はない。

そこで、お化けの劉さん、チョンと析の頭を合図に、たちあがって芸当に移った。

舞台の片側に戸板が立てかけてあり、それにピッタリ背をつけて十二、三の女の児が直立する、と、数十本のピカピカ光る小剣を手にした劉、その少女から三間ほど離れた個所に足場をえらんで、小刀の柄を先に、峰を手のひらに挟んで構えるが早いか! 奇声とともに投げ放った本朝でいう手裏剣の稀法!

晧糸水平に飛んで、発矢! と小娘の頭に刺さった……と見る! 剣鋩、かすかに人体をそれて、突き立ったので、仰天した観覧人たちがホッと安堵の胸をなでおろす間もあらばこそ、二本三本とやつぎばやに劉の手を飛び出した剣。