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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
そして、
「奇怪! 何奴ッ!」
と、乾雲の柄をたたいて叱咤した左膳とともに、皆、庭へ向かっていっせいに身構えをしたが……。
夜は森沈として闇黒の色を深めてゆくだけで、樹々の影もこんもりと黒く狭霧がおりているのか、あんどんの余映を受けてぼやけた空気が、こめるともなく漂っているきり――いつも見慣れた、なんの変哲もない荒れ庭のけしきだ。
不審とも、あやしいとも言いようのない寸刻の出来ごと。
どの方角から短刀が飛んで来たのか……その見わけもつかず、一同、勢いこんだ力のやり場に困って、いささか拍子抜けのまま、なおも、かたなにかけた肘を張りそろえてキッ! と庭面をすかして見ていると、
「いや、おのおの方、お笑い召されることと思って申さなかったが、さっきかしこらと覚しきところに、七つ八つの子供のごとき人影がありましたぞ。それが確かにいま、かの小剣が飛来した時も、ちらと動いたのを拙者は見た……」
というささやくような土生仙之助の言葉に。
子供――というのが、場合が場合だけに、深更ひとしおの妖異じみた恐怖を呼んで、化物屋敷の連中われにもなく思わず慄然と身の毛をよだたせたその刹那であった。