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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

しかしてその空理の徳は、人の頭に機を知らしめて逸早くきざすの一事につきる――と言われているだけあって、これによってもわかるとおりに、手裏剣を投げて人をたおし得るにいたるまでには、単なる小手さきの投術のみではいけない。もとよりその熟達はさることながら、技はいわば下々の下で、体得の域にのぼるためには、空理の理にあって手字の法を覚らねばならぬ。つまり行より心ができて剣意の秘奥にかなわなければ、手裏剣を投じて一家をなすことは不可能なのだ。

しかるに、ただいまのかの投げ手は……?

腥風一陣まき起こって、とっさに二つの命の灯を吹き消し去った手練でも知れるように、魔か魑魅か、きゃつよほど、腕と腹ふたつながらに完璧の巧者に相違ない。

身みずから剣心をこころとする刃怪左膳だけに、かれは相手を測り知ることもまた早かった。

「世の中は広いものだなあ……ウウム! かかる名人がひそんでいたのか」

と、今さらながら敵味方を越えて、左膳はしんから微笑みたい気にもなるのだったが! 二度、

御身ら二十名は順次にわが手裏剣の的也。

という脅迫の文を読み返すと、なんとなく左膳、いずれ近い機会に、おのが左剣とこの手裏剣とちょうちょう火花を散らして相撃つべくさだめられているように思って来て、彼は、ほの暗い行燈のかげに一眼のきらめく顔を、敵意と憎悪に