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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

手をかけた障子が自ら滑り出したように思わず空を泳いでいた栄三郎を、見事に真っ向から割りつけた――と思われた刹那、よろめきながら必死の機、栄三郎の刀尖、平七郎の剣をはじき流して、かろうじて危地を脱した栄三郎、強打を伝えて銀盤のごとくふるえ鳴る武蔵太郎を、こんどは車形にうち振りつつ、

「おウッ!」

おめきざま、月輪の刃ぶすまの真っただなかへ、身を斜かいに斬りこんでいった。

乱戦――。

空高く風が渡っているらしい。

雲の流れが早いとみえて、月光を照ったりかげったり……そのたびに、樹間の広場に皎剣をひらめかす人のむれを、あるいは明るく小さく、またはただの一色のやみに押しつつんで、さながら舞台の幕が開閉するかのように見えた。

豆を炒るような剣人のうごき。

飛びちがえては斬り結び、入りみだれたかと思うとサッと左右に別れ、草を踏みにじり木の葉を散らしてまさにここは神変夢想対月輪一刀の、二流優劣の見せ場となった。

剣戟のひびきは、一種耳底をつらぬいて背骨を走る鋭烈な寒感を帯びている。

それが、助けをいそぐ夜の空気に霜ばしらのごとく立ち伝わってかけ声、風を起こす一進一退――気の弱い者を即殺するにたる凄壮な闘意が、烟霧のようにみなぎって地を這いだした。