轻松读懂日语经典作品
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
このとき、うしろの蔵宿両口屋から出てきた老人の侍が、おなじく小手をかざして栄三郎を望見していた。
「どれ、日の高いうちにひとまわりと出かけましょうか。はい、大きに御馳走さま――姐さん、ここへお茶代をおきますよ。どっこいしょッ! と」
「どうもありがとうございます。おしずかにいらっしゃいまし」
吉原を顧客にしている煙草売りが、桐の積み箱をしょって腰をあげると、お艶はあとを追うようにそとへ出た。
人待ち顔に仁王門のほうへ眼を凝らして、
「もう若殿様のお見えになるころだけれど、どうなすったんだろうね。あんなごむりをお願いして、もしや不首尾で……」
と口の中でつぶやいたが、それらしい影も見えないので、またしょんぼりと葦簾のかげへはいった。
階溜まりに鳩がおりているきり、参詣の人もない。
浅草三社前。
ずらりと並んでいる掛け茶屋の一つ、当り矢という店である。
紺の香もあたらしいかすりの前かけに赤い襷――お艶が水茶屋姿の自分をいとしいと思ってからまだ日も浅いけれど、諏訪栄三郎というもののあるきょうこのごろでは、それを唯一つの頼りに、こうして一服一文の往きずりの客にも世辞のひとつも言う気になっているのだった。