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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

夜泣きの刀! の名にそむかないものか、訴うるがごとく哀れみを乞うがごとく、あるいは何かをかきくどくように、風雨のなかを断続して伝わってくる女の泣きごえであった。

それも、老女――に相違ない。

そして、母屋の方から!

と見当をつけた左膳のにらみははずれなかった。

と言うのが。

ちょうどその暴風雨の真夜中、化物やしきの本殿、鈴川源十郎の居間では……。

お艶の母おさよは……。

栄三郎への手切れ金として五十両の金を源十郎から受け取り、その掛合い方を頼みに、浅草三間町の鍛冶屋富五郎のところへ、出かけたところが、同じくお艶に思いを寄せている鍛冶富が、預かった金を持って逐電してしまったので、しばらくは富五郎の女房おしんとともに帰りを待ってみたものの、富五郎はお伊勢まいりと洒落て東海道へ出たのだから、そう早く戻ってくるわけはない。

といって。

いつまでも他人のうちに無駄飯を食べていることもできず、おまけにおしんが、お艶と富五郎の仲を疑って日ごとにつらく当たりだすので、とうとういたたまらなくなったおさよ婆さん、わけを話して詫びを入れ暫時待ってもらおうと、来にくいところを、今夜思いきって化物やしきの裏をたたいたのだったが――。