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ふたつのいえをつなぐかいそう
二つの家を繋ぐ回想
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,480 字 · 37 页
Aが何か云おうとしても
「もう何も云わないで下さい。今夜は、私の考えたこと丈をきいて頂くためにお呼びしたのだから、何を仰云ってもききません」
と斥けられる。
「おかあさま、それでいいの? 何だか余り……」
自分は、到頭泣き出してしまった。彼女が、何とも云えず狂暴に、何とも云えず苦しさに混乱して居る様子が、自分には、云いようなく辛かった。和らぎたい心持は、溢れる程胸に満ちて居る。而も、私は仕事のことを思うと、もう親にも良人にも代えられない献身を覚え、その、わが命を守る為に、涙も、苦悩も、総て堪えて行かなければならず思うのである。
その心持から、自分は泣き泣き、彼女の求める唯一のもの――悪うございました、と云う詑言を唇に上せなかった。
やがて父上が帰宅され、下でAと話し、二階に来られ、何とも痛ましい顔をして
「ああ困ったことだ。家庭の平和をすっかり攪乱する」
と、大きい暖い頭を振られる。
自分は、悲しみで爆発してしまいたい心持がした。私は皆が可愛いのだ。皆に可愛がられたく思う。けれども、可愛がられ、可愛がる明るい、賑やかな団欒と、芸術とを釣代えに、どうして出来るだろう。