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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
「世間の習慣では、そういう子供はかわいそうね。でも、罪悪かしら――一人の女のひとがその子の母親となるようになった動機が罪悪といえるかしら――」
伸子にそうは思われなかった。
「でもね、当然母親になるはずの女の人と子供とを、そういう条件においておく男があれば、それは罪悪的だわ。子供が生れる生れないにかかわらず、よ。世間が、どうみる、みないに、かかわらず――そうでしょう?」
よくいいあらわせなくて、伸子はもどかしげに目ばたきした。
「そういう条件だのに、それなりずるずるに進行した全体の関係そのものが変よ――まして一方に、もうちゃんと出来上った家庭生活があったりすれば……」
いっているうちに自分にも少しずつ細部が明瞭になって来て、伸子は、
「その意味では女のひとにだって、同じだけ責任があるわけだわ、知らなかったのではないんだもの」
といった。
「愛なんて、ほんとに愛なはずだのに――紛糾や怨ではないはずなのに――妙ねえ。なぜ、こんなに、どこでもかしこでも愛はごたごただの苦しみだのなの? ほんとに、なぜ? 愛が苦しみだなんて――」
ほんとうに、伸子のまわりのどこに、愛の発露とはこうもあろうか、と、目を奪われる眺めがあるだろう。