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ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

「新小説」1920(大正9)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,102 字 · 104 页

青空文庫

ただ君の答えがききたいんだ。」

「何の答えが?」

「どういう解決を望んでるか……。」

「解決の鍵は信子の心が握ってる。」

「然し君にも何かの希望はあるだろう。」

「ない。」

暫く沈黙が続いた。

「では僕は君に尋ねる。一々本当の所を答え給え。」

「うむ。僕はごまかしはしないつもりだ。」

「もし信子さんが、僕に一生を任せると云ったら、君はそれでもいいのか。」

「いい。」

「もし信子さんが、君の手に戻りたいと云ったら、君は許してやるか。」

「今はその力が僕にはないような気がする。然しやがて許し得ると思う。」

「僕達は互に愛したのだ。」

「知っている。」

「君は先夜のことを覚えているのか。」

「覚えている。」

「あの言葉を取り消し給え。」

「僕は、あの言葉は云うべきものではなかったと考えている。然し、あれを取消しても消さなくても、結局同じことのような気がする。」

「なるほど君の云いそうなことだ。あの言葉で僕の心に烙印をおして、僕の心の傷を一層大きくして、それで復讐するつもりだろう。」

「何を云うんだ君は。」

「そして一方では、あの言葉から遡って、信子さんの罪を安価に見積ろうとするんだろう。」

「おい、低い声で云ってくれ給え。