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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

「うちのねね、ユリエって名前つけるん」

「ユリエ? ふうん、ユリコのほうが気がきいとら」

はねかえすように小ツルがいった。松江は胸をはって、

「それでも、小石先生、ユリエのほうがめずらして、ええっていうた」

小ツルはわざととびあがって、

「へえ、なんで小石先生が。へえ!」

なにかをさぐりあてようとでもするような目で松江の顔をのぞきこみ、

「あ、わかった」

ならんでいたミサ子をうしろの方へ引っぱっていって、こそこそささやいた。富士子、早苗、コトエとじゅんじゅんにその耳に口をよせ、

「なあ、そうじゃな」

おとなし組の三人は小ツルの言い分にさんせいできないことを、気弱な無言であらわすばかりで、松江を孤立させようとした小ツルのたくらみはくずれてしまった。よく気のあうマスノが、今日は母の店によって、ここにいないのが小ツルの弱さになっていた。彼女はみんなに、松江がひいきしてもらうために、ひとりで小石先生にへつらったといったのである。そのためにかえってじぶんから孤立した小ツルは、ひとりふきげんにだまりこんで、とっとと先を歩いていった。みんなもそのあとからだまってついていった。