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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

だが、だれひとり夢と考えるものはいなかった。一年に一度か二年に一度、急病人を町の病院へ運んでゆく岬の村の大事件を、さかのぼって子どもたちは考えていた。かつて小石先生もこうして運ばれたのだ。怪我をしたか、急性の盲腸炎か。

なんじゃろう?

だれぞ盲腸の人、おったかいや?

あとから追いついてきた男の子もいっしょにかたまって評定した。女はだれも声をたてず、男の子がなにかいうたびにその顔に目をそそいだ。そんななかで松江はふと、今朝家を出かけるときの母の顔を思い浮かべた。瞬間、黒いかげのさしたような不安にとらわれたが、そんなはずはないのだと、つよくうち消した。しかし、頭痛がするとて顔をしかめ、手ぬぐいできつくきつくはちまきをした、その結び目のところの額によっていた、もりあがった皺を思い出すと、なんとなく払いきれぬ不安がせまってきた。はじめに、今日は父に休んでもらいたいといった母、しかし父は仕事を休むわけにはいかなかった。

「松江を休ませりゃ、ええ」

父が、そういうと、そんならええといい、松江にむかって、

「学校、はじめてなのになァ。だけんど、遊ばんともどってくれなあ」