轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

しかし早苗はのどが痛いのでも、鼻がつまっていたのでもない。痛かったり、つまったりしたのは、お母さんの財布の口のほうで、早苗のために売りにいった珊瑚の玉のついたかんざしは思う値で売れず、洋服を買うことができなかったのだ。人の足もとをみてからにと、早苗の母は、その古手屋(古物商)のことをいつまでもおこりながら、早苗にはやさしく、

「着物きて、いくか」

早苗が泣きそうな顔をすると、

「姉やんの、きれいな着物に腰あげして着ていくか」

「…………」

「おまえだけ着物きていくのがいやなら、やめとけ。そのかわり、洋服を買おうや。どうする?」

「…………」

早苗はぽろっと涙をこぼし、くいしばった口もとをこまかくふるわせていた。二つのうちどちらをとってよいか判断がつかなかったのだ。しかし母親のこまって泣きそうな顔に気づくと、きゅうに早苗の決心はついた。

「旅行、やめる」

こんないきさつがあったとは、だれもしらず、修学旅行は六十三人の一団で出発した。男と女の先生が二人ずつで、もちろん大石先生も加わっていた。午前四時にのりこんだ船の中ではだれも眠ろうとする者はなく、がやがやのさわぎの中で、「こんぴらふねふね」