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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
ようやくみんなの足は早くなっていった。子どもたちだけでこの道を歩くのは、はじめてだった。山ひだを一つすぎるごとに新らしい眺めがあらわれて、あきなかった。岬を横ぎり、入り海ぞいの道にかかると、一本松の村はななめうしろに遠のく。それだけ近くなっているのが、うそのような気がして心細くなったが、だれも口には出さない。やがて、はるかかなたに本校がえりの生徒のかたまりがみえた。みんな、はっとして顔を見あわせた。
「かくれ、かくれ。大いそぎで」
マスノの一声は、あとの十一人を猿のようにすばしこくさせ、萱山の中へ走りこませた。がさがさと音がして萱がゆれた。
「じっとして! 音さしたらいかん」
マスノがうすいくちびるをそらして、少しつった切れ長の目にものをいわせると、竹一や正までが声もからだもひそめてしまった。みんなの背の倍もありそうな笹萱の山は、十二人の子どもをかくしてさやさやと鳴った。しかし気づかれずに大きな生徒たちをやりすごせたのは、じつにマスノの機転であった。彼女ににらまれると、みんなは猫のようにおとなしくなるのだ。
岬の道を出て、いよいよ本村にはいるころから、みんなはしぜんと小声にしゃべっていた。