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にかいから

二階から

岡本 綺堂

「木太刀」1915(大正4)年3、7、8、9月、1916(大正5)年1、4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,761 字 · 30 页

青空文庫

六 蛙

私は、彼に敵することは能ないと悟った。

小さい虫は遂に私を征服して、私の庭を傲然として占領している。

六 蛙

次は蛙である。青い脊中に軍人の肩章のような金色の線を幾筋も引いている雨蛙である。

私の狭い庭には築山がある。彼は六月の中旬頃からひょこりとそこに現れた。彼は山をめぐる躑躅の茂みを根拠地として、朝に晩にそこらを這い歩いて、日中にも平気で出て来た。雨が降ると涼しい声を出して鳴いた。

今年の梅雨中には雨が少かったので、私の甥は硝子の長い管で水出しを作った。それを楓の高い枝にかけてあたかも躑躅の茂みへ細い滝を落すように仕掛けた。午後一時半頃、甥は学校から帰って来ると、すぐにバケツに水を汲み込んで水出しの設備に取かかる。細い水は一旦噴き上って更に真直にさッと落ちて来ると、夏楓の柔い葉は重い雫に堪えないように身を顫わした。咲き残っている躑躅の白い花も湿れた頭を重そうに首肯かせた。滝は折々に風にしぶいて、夏の明るい日光の前に小さい虹を作った。湿れた苔は青く輝いた。あるものは金色に光った。

「もう今に蛙が出て来るだろう。」

こういっていると、果して何処からか青い動物が遅々と這い出して来る。