轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にかいから
二階から
岡本 綺堂
「木太刀」1915(大正4)年3、7、8、9月、1916(大正5)年1、4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,761 字 · 30 页
陸軍大尉の軍服は着けているが、どこの誰だか判らないということになってしまった。要するに彼はほんとうの軍人でない、何者かが軍人に変装してこの火薬庫へ窺い寄ったのではあるまいかという決論に到着した。果してそうならば問題がまた重大になって来るので、死体を一先ず室内へ舁き入れて、何や彼やと評議をしている中に、短い夏の夜はそろそろ白んで来た。死体は仰向に横えて、顔の上には帽子が被せてあった。
とにかくに人相書を認める必要があるので、一人の少尉がその死体の顔から再び帽子を取除けると、彼は思わずあっと叫んだ。硝子の窓から流れ込む暁の光に照された死体の顔は、いつの間にか狐に変っていた。狐が軍服を着ていたのであった。
「狐が化けるはずはない。」
若い士官たちは容易に承認しなかった。しかし現在そこに横っている死体は、人間でない、勿論M大尉でない。たしかに一匹の古狐であった。若い士官たちが如何に雄弁に論じても、この生きた証拠を動かすことは不可能であった。狐や狸が化けるという伝説も嘘ではないということになってしまった。S君も異議を唱えた一人で、強情に何時までも死体を監視していたが、狐は再び人間に復らなかった。