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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

小栗虫太郎『人外魔境』。同一底本的分册已合并为一书。收入:人外魔境、人外魔境、人外魔境、人外魔境。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,713 字 · 205 页

青空文庫

そのしたの、風化した花崗石のまっ赭な絶壁。そこから、白雲と山陰に刻まれはるばるとひろがっているのが、悪魔の尿溜につづく大樹海なのである。

翌暁、赭い泥河のそばで河馬の声を聴いた。その、楽器にあるテューバのような音に、マヌエラは里が恋しくなってしまった。

しかしまだ、ここは暗黒アフリカの戸端口にすぎない。きのう見た、藪地のおそろしい棘草、その密生の間を縫う大毒蜘蛛――。しかし今日は、いよいよ草は巨きく樹間はせまり、奥熱地の相が一歩ごとに濃くなってゆくのだ。そして、この三日の行程が四十マイル弱。最後の根拠地となるマコンデ部落にはいったのが、翌日の午過ぎだった。

ここから、想定距離二十マイルの山陰に、悪魔の尿溜の東端をみるはずなのである。そしていよいよ、これまで経てきた平穏な旅はおわり、百年の道にも匹敵するその二十マイルへ、悪魔の尿溜攻撃がはじまるのだった。

「とんでもねえ。荷担ぎにゆきァ、死にに往くようなものさァ」

酋長がぐいぐい棕櫚酒をあおったり印度大麻を喫ったり、すこぶる上機嫌のなかでもこれだけは聴かなかった。

「マア、論より証拠というだで、ちょっと見てもらいますべえ」