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じんせいあんない

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坂口 安吾

「キング 第三〇巻第一一号」1954(昭和29)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,201 字 · 21 页

青空文庫

朝もおそく、主として女房に支那ソバをうたせて彼はせいぜい売って歩くぐらいが仕事だ。売る方だけは一日も欠かさないのは出先で新聞をよませてもらう必要があるからで、よほどの暴風雨でない限り休まない。製造は女房、販売は宿六と定まっては女房の骨折りが大変であるが、女房に割がわるいのは日本に生れた因果であるし、紙代と切手代だけのことだから、パチンコに凝られるよりはマシだと思って女房も我慢してきた。

ところが近来商売が次第にふるわなくなった。宿六の投書熱のせいではなく、小資本の悲劇であるが、機械製の支那ソバが大量にでまわるようになって、その方が安いから売れなくなったのである。中には手打ちの支那ソバはさすがに味が別だと云ってヒイキにしてくれる店もあるが、そういう店に限って日に十ぐらいしかでない喫茶店なぞで、大口は味より安値でみんな機械製の方へ転向してしまったから日に三十ぐらいがせいぜいということになってしまった。ドンブリの支那ソバ三十とちがってただのソバだけ三十ではモウケもいくらにもならない。一家四人の口をしのぐことができなくなった。

「転業しなきゃア、もうやってけないよ」