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じんせいあんない
人生案内
「キング 第三〇巻第一一号」1954(昭和29)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,201 字 · 21 页
「よーし。オレも一ツ投書しよう」
というので、昼の疲れもいとわず一週間もかかって悩める男の悲しみを訴える。自分に手頃の煩悶がないから、どうしてもニセモノではあるが、諸先生をあざむこうというコンタンではなく、いわばまア、ラヴレターのように真情がこもっているつもりだ。こういうのをせッせと書いて諸新聞へ送った。手応えなく返答がないのは概ね恋文の宿命であるから落胆はしない。益々血にもえて書き綴った。
はじめはA子と同時にB子が好きになりというような月並なのからはじまり、九ツのとき従兄にイタズラされた年ごろの乙女になったり、ついには男子として二十五まで育ちながら身体の変調に気づき同性の逞しい姿をみると呼吸困難を覚え思わず胴ぶるいが起るに至ったテンマツなぞをモノするに至った。六十何通送ったうち、三ツ採用されたが、それは実に愉快なものであった。数年も生きのびた心境を感じたのである。
この人物、まだ若い男かというとそうではなく、二等兵で戦争に行って捕虜にもなってきた山田虎二郎という当年三十八のいいオッサンなのである。むろん女房もあって、六ツと三ツの子供もある。
これに凝りだして以来、宿六は夜業を怠る。