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ものをこわすのがしょうばいじけん
什器破壊業事件
海野 十三
「大洋」1939(昭和14)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,352 字 · 31 页
彼女がポストに近づいたとき、ポストの向うから、
「やあ、だいぶん涼しくなりましたねえ」と声をかけたものがある。もちろんそれは帆村荘六だった。光技は、どぎまぎして、
「あら、まあ先生」と叫んだ。
「さあ早いところ伺いましょう。もう大花瓶を壊したんですか」
「あら、早すぎたかしら」
「そんなことはありません。大いに結構です。ところで貴女は探偵だから分るでしょうが、あの大花瓶を壊されてから主人公は、なにか室内の什器の配置をかえたということはありませんか」
「あーら、先生は都合のいいときばかり、あたくしを探偵扱いなさるのですね。そんな勝手なことってありませんわ」と、やりかえしたが、心の中ではいよいよ事件の核心にふれてきたんだわと光枝はひそかに胸をどきどきさせた。
「そんなことはどうでもいい。あとで皆一つに固め貴女の抗議をうけることにしましょう。――で、いまの返事は、どうなんですか。まさか貴女は、それについてなんにも気がつかないというわけではありますまい」帆村は、日頃の彼にも似合わず、妙に焦り気味になっていた。
「そうですわねえ」と光枝はわざと間のびのした返事をして、帆村がじれるのを楽しみながら、「旦那様のお居間の什器で、位置の変ったものといえば――」