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ものをこわすのがしょうばいじけん

什器破壊業事件

海野 十三

「大洋」1939(昭和14)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,352 字 · 31 页

青空文庫

「なんです、その位置の変ったものは?」

「木彫の日光の陽明門の額が、心持ち曲っていただけです」

「ふむ、やっぱりそうか。その外に変ったものがもう一つあるでしょう」

「いいえ、他にはなんにもありませんわ」

「いや、そんなことはない。きっと有る筈ですよ。それとも貴女の鈍い探偵眼には映らないのかもしれない」

「まあ、――」と光枝は、むかむかとしたが、

「なんとでもおっしゃい。ですけれど、他にはなんにも変ったものはありませんのよ」

「そんな筈はないんだ。そこが一番大切なところなんだが――ちぇっ、仕方がない」と帆村は無念そうに唇を噛んで、「とにかく壊れた什器は、至急補充します。それから大花瓶は、ちゃんと元のところに置くようにしてくださいね」

「だって大花瓶は、きょう壊してしまったんじゃありませんか」

「だから、至急あとの品を補充するといっているじゃありませんか」

「ああ、また新しい花瓶がくるのですか」

「貴女も案外噂ほどじゃないなあ」

光枝は、それが聞えないふりをして、

「そして先生が持っていらっしゃるの」

「そんなことは、貴女が心配しなくてもいいです」

「先生、それから……」

「頼んだことだけはやってください。