轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いまどしんじゅう
今戸心中
広津 柳浪
「文芸倶楽部」1896(明治29)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,688 字 · 74 页
「まアお可哀そうに」と、吉里もうつむいて歎息する。
「だがね、吉里さん、私しゃもうこれでいいんだ。お前さんとこうして――今朝こうして酌をしてもらッて、快い心持に酔ッて去りゃ、もう未練は残らない。昨夜の様子じゃ、顔も見せちゃアもらえまいと思ッて、お前さんに目ッかッたら怒られたかも知れないが、よそながらでも、せめては顔だけでもと思ッて、小万さんの座敷も覗きに行ッた。平田さんとかいう人を送り出しにおいでの時も、私しゃ覗いていたんだ。もう今日ッきり来られないのだから、お前さんの優しい言葉の一語も……。今朝こうしてお前さんと酒を飲むことが出来ようとは思わなかッたんだから……。吉里さん、私しゃ今朝のように嬉しいことはない。私しゃ花魁買いということを知ッたのは、お前さんとこが始めてなんだ。私しは他の楼の味は知らない。遊び納めもまたお前さんのとこなんだ。その間にはいろいろなことを考えたこともあッた、馬鹿なことを考えたこともあッた、いろいろなことを思ッたこともあッたが、もう今――明日はどうなるんだか自分の身の置場にも迷ッてる今になッて、今朝になッて……。吉里さん、私しゃ何とも言えない心持になッて来た」