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えせものがたり

似而非物語

山本 周五郎

「週刊朝日涼風読物号」朝日新聞出版、1952(昭和27)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,817 字 · 64 页

青空文庫

かれらの眼つきも表情も、立ち居の動作もひどく緊張し、全身が絶えずぎらぎらしているようにみえた。三之木三郎はやはり木剣と睨みあっていたが、彼の熱心さは殆んど頂点にまで昂まり、相手が宙にぶら下っているだけのただの木剣だったから、五人組の娘たちは、

――あの人あ脳を患ってるじゃねえかえ。

などと云うくらいであった。

二之木が去ったことについて、杢助にはかくべつ感想はなかった。が、それから十日ほどして、第二の出来事が起こったときは、彼は感想なしではいられなかった。ちょうど四之木が肩を叩いているときであったが、谷から吹きあげて来る新秋の風に、杢助がふとくしゃみをもよおした。寛げた衿からふところへやや肌寒い風がはいったためらしい、われ知らず相当に大きなくしゃみをした。すると四之木の躯がぎくりと硬化し、肩を叩いていた手が動かなくなった。そして、杢助がどうしたのかと振向こうとしたとき、四之木四郎はぱっと立って、庭へとびおりた。じつにすばやい動作で、庭へとびおりるなり(二之木二郎と同じように)土下座をし、両手を地面へついてこっちを見あげた。

「有難きただいまの御くしゃみ」