轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
「週刊朝日涼風読物号」朝日新聞出版、1952(昭和27)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,817 字 · 64 页
――見えるものをよ。
父親の百助は彼の性分を撓め直そうとした。ずいぶん手を尽したが、結局うまくいかなかった。なぜかというと、少しきびしく叱るとか折檻などすると、杢助はたちまち「くる眼」の発作を起こすのである。くる眼は「狂い眼」の意味らしい、すなわち両眼の瞳孔のある部分が、おのおの勝手な方向へ動きだし、それが長く続くと、ついには、眼球が裏返しになるというのである。眸子というものは、だいたいとして同時に同一方向へ動くはずである。それが片方ずつ勝手に動きだし、双方のめだまが裏返しになる(当時はまだ解剖学が未発達だった)とすると、これは相当なものだなどという程度のことではないであろう。一例を挙げると、杢助が七八歳の頃の出来事だというが、一匹の恐ろしい食いつき犬が村へやって来た。勝山城下のほうから峠を越して来たらしい、仔牛ほどもある大きな赤毛の犬で、尻尾がくるっと巻き上っていた。凄いような眼で左右を睨みながら、いつも悠々とやって来て、ちょっとでも気にいらない者があると食いついた。この犬がいるあいだは、村人たちはおちおち眠ることもできなかった。すると或る日、杢助が道のまん中でその犬と出会った。