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ふしゅう

俘囚

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,938 字 · 31 页

青空文庫

あまりの孤独、消しきれない罪悪、迫りくる恐怖戦慄、――その苦悶のために気が変になりそうだ、恐ろしかった。あの重い鉄蓋が持ち上がるものだったら、あたしは殺した夫の跡を追って、井戸の中に飛びこんだかも知れない。

喚き、悶え、暴れているうちに、とうとう身体の方が疲れ切って、あたしはベッドの上に身を投げだした。睡ったことは睡ったが、恐ろしい夢を、幾度となく次から次へと見た。――不図、その白昼夢から、パッタリ目醒めた。オヤオヤ睡ったようだと、気がついたとき、庭の方の硝子窓が、コツコツと叩かれるので、其の方へ顔を向けた。

「ああ、――」あたしは、思わず大声をあげると、その場に飛んで起きた。なぜなら、庭に向いた窓の向うから、しきりに此方を覗きこんでいる者があった。その円い顔――紛れもなく、逃げたとばかり思っていた松永の笑顔だった。

「マーさん、お這入り――」

「どうして昨夜は来なかったのさア」

嬉しくもあったけれど、相当口惜しくもあったので、あたしはそのことを先ず訊ねた。

「昨夜は心配させたネ。でもどうしても来られなかったのだ、エライことが起ってネ」

「エライことッて、若い女のひとと飯事をすることなの」