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ふしゅう

俘囚

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,938 字 · 31 页

青空文庫

「そッそんな呑気なことじゃないよ。僕は昨夜、警視庁に留められていたんだ。そして、いまから三十分ほど前に、釈放になったばかりだよ」

「ああ、警視庁なの!」

あたしはハッと思った。そんなに早く露見したのかなア。

「そうだ、災難に類する事件なんだがネ」と彼は急に興奮の色を浮べて云った。「実はうちの銀行の金庫室から、真夜中に沢山の現金を奪って逃げた奴があるんだ。そいつが判らない。その部屋にいる青山金之進という番人が殺されちまった。――そして不思議なことに、その部屋に入るべきあらゆる入口が、完全に閉じられているのだ。穴といえば、その室にある送風機の入口と、壁の欄間にある空気窓だけだ。空気窓の方は、嵌めこんだ鉄の棒がなかなかとれないから大丈夫。もう一つの送風機の穴は、蓋があって、これが外せないことはないが、なにしろ二十センチそこそこの円形で、外は同じ位の大きさの鉄管で続いている。二十センチほどの直径のことだから、どんなに油汗を流してみても、身体が通りゃしない。それだのに犯人の入った証拠は、歴然としているのだ。こんな奇妙なことがあるだろうか」

「現金は沢山盗まれたの?」