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はいくのつくりよう
俳句の作りよう
高浜 虚子
「ホトトギス」1913(大正2)年11月~
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,854 字 · 91 页
「畳」という字も「歩」という字もともに諸君の答案のうちにありました。その二字とも別に珍しい字ではありませんでした。しかし、
大蟻の飛石歩む暑さかな
にくらべて原句はどういう点に特色がありましょうか。飛石の上を蟻が歩いているということは蟻としては当然歩むべきところを歩いているので、それが大蟻であったにしても格別驚くに足りませんが、畳の上を歩いているというに至って――その歩くべからざるところを歩いているという点において――初めて強い印象を受けるのであります。ことにそれが普通の蟻であったならばそれほどに驚かれるわけでもないのでありますが、それが大蟻であるところからいかにも印象が強い、そこが看過することのできない点であります。次にまた、
大蟻の畳に登る暑さかな
にくらべてどうかというと、事実は同じことでありながら、「畳に登る」という方はただ畳に上ったということを概括的に叙したのにすぎないのでありますが、原句の方は一匹の大蟻ががさがさと畳の上を歩いているところがはっきりと目の前に見えるように描かれてあります。しかも「這へる」といわずに「ありく」と言ったところに、畳の上を人間が歩くように大蟻が歩いているという――いかにも蟻が大きく感じられる――心持が適切に出ております。